旦那の実家は施錠の習慣がない

当時付き合っていた夫からプロポーズを受けた私はもちろん、即答で快諾した。夫は一流企業に勤めていて性格も申し分ないし、何より次男ときている。夫の兄はすでに結婚して両親と同居しているため、私たちの出番はきっとない。しかも夫の両親は東北の、最寄りの新幹線の駅から車で2時間以上かかる場所に住んでいるため、きっと殆ど会うことはないと思われる。打算的と思われるかもしれないけれど、先に結婚していた友人たちから嫁姑問題を聞かされるたびに、私はできればそういうのと関わらなくていい人を選びたいと思っていたのだ。

それから話はとんとん拍子に進んでいった。義父母にこちらに出てきてもらい、両家の顔合わせも済ませた。とても穏やかで気さくな感じの義父母たちにホッとした。でもやはり同居は勘弁なことに変わりはないけれど。
結婚式を終えた私たちはすぐに子宝に恵まれた。出産して半年後、初めて夫の実家に泊りがけで遊びに行くことになったのだが…。想像していたよりもずっと、夫の田舎は田舎だった。田んぼが延々と続いている。道路も舗装されていないし、外灯だってもちろんない。一体ここら辺に住んでいる人たちはどうやって夜道を帰ってくるのだろうと不思議だった。

夫の実家は最近義兄が新築したばかりでとても広かった。私はきょときょとしながら最後に義父母の家に入った。そしてしばらくすると、ピンポンピンポンと連打でチャイムが鳴ったので驚いた。姑が玄関に行くと、「だーれー?鍵閉めたのー?」と義姉の声が聞こえてきた。えっと、私ですけど…と小さく言うと、みんなから一斉に笑い声が上がった。私何か変な事した?と訝っていると、「この辺の家はみーんな鍵なんか閉めねーんだ」と義父が言った。テレビでは聞いたことあるけれど、まさか本当にそんな場所が残っているなんて!でも義父母や義兄夫婦の穏やかさを見ていたら、それも何だか納得してしまうのだった。